処女には処女の

「……えっちって、そんなに気持ちいいのかな……」
 私は、読んでいた雑誌を放り投げた。
 よくあるティーン雑誌。最近はとても過激になって、他人の性体験が事細かに読めてしまう。
 同じ年頃の十代の女の子たちの赤裸々な体験談。中には私より年下の中学一年とか、小学生の投稿もあったりする。言葉に飾りなく、あっけらかんと書かれたその過激な内容。
 だから、処女の私でもまるで体験済みであるかのようにいろんな事を知っている。
 体位だとか、女の子の性感帯はどこだとか、フェラチオの仕方とか、たとえばそんなこと。
 でも、実際に『どんな風に感じるのか』なんていうことはやってみないとわかんないのも、これ、事実。処女を失うときの痛さも、わからない。
 膜が破れて血が出るんだから、たぶん、とっても痛いものだとは思うんだけど。
 いずれにせよ、全部想像してみるしかない。
 でもね。
「よいしょ……」
 私は起き上がると、本棚の奥に手を伸ばした。
 綺麗に整理された文庫の奥の空間から取り出した一冊の本。それは、所謂『成年向けライトノベル』と呼ばれるもの。親に見つかるといろいろとややこしいから隠しているんだけど、こんな本を私は何冊か持っている。
 買うときはドキドキものだけど、意外と見咎められないもので、そのドキドキ感も少し癖になっていたりする。
 私は、手にしたその本をぱらぱらとめくった。
 何度も何度も読み返したその本の内容は、よく知っている。だから、私がページをめくるのはその本を読むためじゃない。
「……あった」
 開いたページは、ちょうどえっちシーンの始まり。同じ年頃の女の子が、二人の男にとにかくしつこく愛撫されていっちゃうという内容。


『あ、ああっ! やめてぇっ、いやあっ』
 引き上げられたセーラー服から、白いブラジャーに包まれたみずみずしい乳房が覗いた。泣き叫ぶ少女の涙すら楽しむように男たちは下卑た笑みを浮かべた。
『まあまあ、そう言うなって。気持ちよくしてやるから』
『へへへ、そのうちあまりの気持ちよさに泣き喚くようになるぜぇ?』
『そ、そんなっ! ああ、やめてぇ!』
 後ろから少女を羽交い絞めにした男が、乳房を守るブラジャーをいとも簡単に引き上げた。
 少女の叫びも虚しく、ぷるんとほどよい大きさの白い乳房が惜しげもなく男たちの目に晒される。
『へへ……さすが若いのは違うぜ。ぷりっぷりじゃん。食べちまいてぇ』
 舌なめずりする少女の真正面に立つ男の前で、少女の可憐な乳房が無骨な掌に覆われた。容赦なく揉みしだく男の手の中で、哀れにもその乳房はぐにぐにと形を変える。
『おいっ、せっかく俺がいただこうと……』
 文句を言いかけた男など構いもせずに、少女の背後で男は気色悪い笑みを浮かべた。
『いやっ! 離してっ! いやあっ!』
『うへへっ。揉み心地もいいなあ。ボールみたいに弾力があるぜ』




 むにっ。
 そんなに気持ちよくないけどな……。
 パジャマの上から自分のおっぱいを触っても、それほど気持ちいいなんて思えない。
 揉んでもなんとも思わないし、普通に撫でたって何ともない。
 じかに触っても、たいして変わらない。
 これは、何回オナニーを繰り返してもそうで、だから、きっと私のおっぱいは性感帯じゃないんだろなってことだと思う。
 乳首を弄ればそれなりにちょっとは感じるんだけど、でも、そんなに夢中になるほどじゃない。
「それとも私、鈍いのかなあ……」
 ちょっとだけ不安になる。
「もっと一杯触ったらおっぱいも感じるようになるのかなあ……?」 
 将来に期待。
 そう思うことにして、私は続きに目を走らせた。




『ちぇっ。じゃあ俺はこっちをもらうぜ』
『いやっ! いやあっ!』
 少女のスカートのホックに男の手がかかった。何の障害もなく、少女の腰を覆っている布はいとも簡単に地面に落ちる。
 その下には、白地にピンクのリボンをあしらったかわいらしいデザインのショーツ。
 ますます暴れようとする少女の抵抗は、胸を揉みしだく男が完全に封じていた。
『へへ、かわいいのはいてるじゃん』
『いやあっ! いやああ!』
 しゃがみこんだ男の指がつんつんとパンティの上から少女の股間をつついた。少女は腰を振って逃れようとするが、陵辱者の目にはむしろ誘っているようにしか見えない。
 男はにやりと笑うと、ポケットに手を突っ込んだ。
『邪魔なものは取っちまおうぜ』
『ひいっ!』
 男がポケットから取り出したものを見て、少女の喉から引きつった悲鳴が漏れる。
 男は、取り出した飛び出しナイフの刃を少女に見せつけると、ショーツの股布の部分を引っ張った。
『暴れると大事なとこまで切っちまうぜ』
『い、いや……やだ……お願い……』
『怪我するのがいやならおとなしーくしてな。俺ってば不器用だからさ。どこ切るかわかんねーよ? ん?』
 鋭い刃物を見せ付けられては少女は動けない。男は引っ張った股布の部分にナイフの刃を入れると、あっけなくそこを切り裂いた。
『み、見ないで……』
 股布を裂かれたことでくるっと丸まったショーツの残骸が、少女の腰にまとわりつく。だが、男はすでにそんなものは見ていない。
 しゃがみこんだ男の目の前には少女の股間。薄めの陰毛の下にはくっきりと割れ目が見えている。
『うまそうじゃんか』
『お願い、見ないでぇ……』
『何、じっくり見て欲しいって?』
 へらへらと笑う男は、ぴたぴたとナイフの刃で少女の太腿を叩きながら少女を見上げた。
『見、見ないで……』
 それでもかろうじて拒絶の言葉を口にした少女をにやりと一瞥すると、男は少女の片足を方に抱え込んだ。
 よじれた割れ目から、桃色の襞と、肉色の突起の先端が覗いた。
『やめて……やめてぇ!』
『うるせぇ!』
『ひぃっ!』
 少女の白い肌に男のナイフが押し当てられた。恐怖に竦む少女の胸を揉みしだきながら背後の男がのんびりと口を開く。
『おいおい、怪我させるのは後でもいいじゃん。股から血ぃ出すだけで勘弁してやろうぜえ』
『そ……そんな……』
『おとなしくしてるなら別に切りゃしないって』
 下から流された視線が少女の動きを縫いとめた。まるで、獲物を甚振って楽しむ猫科のような。
 男は、脇にナイフを置くと、少女の薄い翳りに手を添えた。
『じゃ、いただきまーす』
 ふざけた口調の男の声と同時に、誰にも触れさせた事のない少女の割れ目が男の手によって暴かれた。



 ここからが、本格的な陵辱の始まりとなる。
 と、言うより、私の個人的な『抜きどころ』。
 この言葉も、最近覚えた。
 アダルトビデオには抜きどころがあって、そこで男の人はいくんだとか。
 なるほどって感じ。
 前哨戦みたいな前置きがあって、本格的に感じる『抜きどころ』がある。
 私は、本を片手にコロンと寝転がると、そっと下着の上から股間に触れた。ぬるっとした感触が指先に触れる。
 ここまでの内容で、しっかり私自身が感じて欲情してしまった証。
 これを確認して、私は下着の中に指を滑り込ませた。
 濡れていないままに触っても痛いだけなんだもの。私のクリトリス。
 お話の中みたいし、最初から触ったって気持ちよくなんてない。でも、濡れてるとすごく気持ちいいの。不思議なことに。
「ん……」
 お汁が溢れているところに指を浸して、ぬるぬるのお汁をたっぷりと指先に取る。それから、その指先を私はクリトリスに押し当てた。
 そうしながら、片手で本のページをめくる。
 コツがいるけど、うつ伏せに寝転がってなら、何とかなる。
「ん……ん……」
 くるくるとクリトリスを擦ると、なんだかくすぐったいような、もどかしいような気持ちよさがそこからじわじわと湧き上がってくる。最初から強く触ると痛いので、ここはじっくりと、優しく。
 そうやって触りながら、私は続きに目を走らせた。



 男の目が少女の隠された秘裂を余すところなくじろじろと見る。何も知らないその襞、肉芽、その奥の秘密の洞穴に至るまで。
 じっと固まったように動けない少女の胸を背後からもう一人の男が揉み続ける。その動きは胸を揉むだけのものから、乳首を摘み、くりくりと硬く立ち上げさせるものも加わっていた。じっと刺激を受けるだけの少女の顔は、恐怖と羞恥に引きつっている。
 少女の股座を覗く男の唇が開き、長い舌が伸びた。
『い……いや……』
 少女の呟きのような抵抗など、男は意に介さない。
 ぬるりとした熱い塊が少女の一番敏感な箇所に触れた。
『ひ、ひぃ……』
 引きかけた少女の腰を男が掴んで引き止めた。
 少女の割れ目に鼻を埋めるようにして大胆に、そして繊細に男が舌を使う。
 ぬめぬめとしたものが、まるで他の生き物のように襞を擦り、感じやすい肉の芽を舐めては襞の入り口を擽る。
『あ、あううっ!』
 クリトリスを舐め擦られながら乳首を摘まれ、少女は悶えた。その様子に少女の乳房を揉む男がにやりと笑いながら少女の耳をぺろりと舐めた。
『感じてるんじゃん。気持ちいいんじゃないの?』
『そ、そんな……あああっ』
 言葉とは裏腹な感触が少女の腰を捕らえた。
 男の唇が柔らかくクリトリスを吸い上げ、ちろちろと舌で擽られたそのとき、堪えがたい悲鳴が少女の口から漏れた。
『へへ、いいんだろう? たっぷり濡らしてやっからな。目一杯感じな』
『いや……感じてなんか……はぁぅっ』
 一度少女のつぼを捕らえてしまえば男にとって経験の少ない少女を快楽に溺れさせてしまうことなどたやすいことだった。
 ねちっこい舌がいやらしい音を立てて少女の割れ目を舐めまわす。いつしか少女の足はかなり大きく開かされてしまっていた。



「ああ……」
 クリトリスを弄りまわす私のアソコも、かなりすごい音がしている。
 溢れた愛液で手がぬめり、刺激がしにくくなっているほどに。
 パンティなんか、とっくの昔にぐっしょり。
 あとで履き替えなきゃ、なんて考えが頭の端によぎる。
「処女なのに……こんなに感じちゃうなんてぇ……」
 自分で呟いて、自分で感じている。
「あ……はぁ……」
 指に転がされるクリトリスがかなり大きくなってるのがわかる。もうちょっと弄ったら、いけるはずだった。



『い、いやあぁ……いやぁ……』
『こっちもうまい。やっぱ若い乳はいいもんだ』
 少女の背後から乳房を揉んでいた男が、背後から少女の脇の下をくぐるようにそれに吸い付いた。ちゅうちゅうと卑猥な音を立てて乳首を吸い、硬く立ち上がったそれをぺろぺろと舐めまわす。
『こっちもいい味がだいぶしてるぜ。かなり濡れてきた』
 男のくぐもった声が少女の股間から響いた。くちゅくちゅと音を立てて襞を舐めまわし、吸いたててはクリトリスを舌で擦りあげて悲鳴をあげさせる。
 羞恥と嫌悪に満ちた少女の顔は赤く染まり、呼吸は荒く、明らかに別の感覚が生まれつつあった。
 それを見て取った男は、クリトリスを覆う皮を指で剥き上げ、ぶちゅっと吸い付いた。これまでより荒く大きな動きでクリトリスを翻弄しながら吸い付くと、少女の口から明らかに快楽の悲鳴が上がる。
『ああんっ、いやあっ!』
『いっちまいな』
 少女の耳をしゃぶっている男が下卑た笑いとともにそう言った。
 感じたいわけではない。
 だが、明らかに体が裏切っていた。
 気持ち悪いと思うその一方で、未体験のその感覚を追い求める女としての欲望が確かにあるのだ。
 唇で剥き上げて敏感になったクリトリスを揉みながら、男が舌でくりゅくりゅとそこを弄る。痛いほどに硬くなった乳首を摘み上げられ、もう、少女に逃げ場はなかった。
『ああ……ああんっ!』
 少女の腰が震えたそのとき。
 股座に食らいついた男の顎を、ぬるりとした粘液が一筋、伝い落ちた。



「ああ……すご……」
 自分の指が拙いのか、それともオナニーじゃそんなに簡単にはいけないのか、本の中の女の子がいかされても、私はまだいけていなかった。
 もうちょっとだというのに。



『さて……じゃあ、いただくかな』
 少女の愛液でぐしょぐしょに濡れた顎を拭い、男は身を起こした。ぐったりとしたままの少女の乳房を、少女を後ろから抱えた男がぐっと握り締め、にやりと笑った。
『お前が先でいいぜ。俺はあとからゆっくりといただくからよ』
『おう、悪いな』
 男はズボンの前をくつろげると、すでに硬く大きくなった肉棒を取り出した。



 ここまで目を走らせて、私はページを戻した。
 戻した先は、脱がされた女の子が男たちに愛撫されるところ。
 普通に読んでるときはいいんだけど、オナニーのときは想像しにくい挿入シーンより、愛撫で感じさせられてるところのほうがいきやすい。
 だって、いれられたことないからわかんないんだもん。
 気を取り直して私は、クリトリスを指先で弄り始めた。
 この先っぽの部分をもう少し弄ったらいけそうなんだけど、なんだかいくのがもったいないような気もする。
 お話の中でいかされている女の子たちって、何回もすぐにいけるみたいだけど、私はいったすぐってすごく敏感になってて触ることもできないんだもん。
 でも、やっぱり読み進めてると我慢できなくなって、私は一番弱い先端をくるくると弄りだした。
「ああ……ん……」
 小説の中みたいに大きな声は出せないし、出ない。
 そんなことしたらお母さんが気づいちゃうし、なんだか気が散っちゃう。
 でも、確かえっちのときに声出さないのって、まずいんだよね……。
 声を噛み殺したままそんなことを考えながら、私はクリトリスを弄る指の動きを早めた。
 腰まで震えて、だんだんと切羽詰ってくる。
「ん……ん……」
 息が荒い。
 お話の中の女の子がアソコを舐められて悶えるところで、私はクリトリスに最後の愛撫を与えた。
「ああんっ……」
 体が突っ張って、頭が真っ白になる。
 アソコからすごい痺れが腰を伝って這い登り、次の瞬間にはそこはとても触っていられないくらい敏感になる。
 オナニーでいく感覚って、まるで勇気を出して踏み出す一歩みたい。
 楽しみで、残念。
 気持ちよくて、怖い。
 
 息を切らしながら、私は放り出したさっきの雑誌を見た。
 ぐっしょりと濡れた指とアソコをティッシュで拭いて、パンティを脱いじゃう。
 セックスって気持ちいいのかな……。
 やっぱりぼんやりと考えるのはそんなこと。
 でもね。
 処女だっていけちゃうんだもん。
 気持ちいいことは、知ってるよ?
 でも、これよりセックスのほうが気持ちいいんだったら……やってみたいなあ……。

このページのトップへ