ウスバカゲロウ
規則的に動く男の少し薄い頭が汗に光っているのをボーっと見ていた。
いい・・いいよ・・・亜里沙ちゃん・・・
男が呟くのを聞きながら申し訳程度の喘ぎ声を漏らす。
ん・・・ぁ・・・いいの・・ん・・・
思考は快楽とは別の次元にあるのに、あたしのそこはぐちゃぐちゃと淫猥な音を立てて男を飲み込んでいた。女の身体は物が入ればあらかたは濡れるようになっている。それはいやというほど思い知った事実。身体と心が別なのは男だけじゃない。
亜里沙・・・いいかい・・・どこがいいの・・・・
最初の一回はわざと恥ずかしげに答えない。そんな4文字、答えるのはわけもない。
・・ぁん・・あそこが・・・・
・・あそこじゃわからないよ・・どこがいいの・・?
男の声が喜色に染まるのがわかる。
ばかばかしい。
思っても言わない。あたしはそれでお金を稼ぐんだから。
ん・・おまんこ・・・おまんこがいいのぉ・・・
男の顔が満足げに歪む。仮面の恥じらいになんて気づきもしない。もしかしたら・・わかりきってて満足しているのかもしれないけど・・。
ありさはいやらしいね・・・。
いやらしい女が好きなんでしょ。表面は慎ましやかで、脱がせばいやらしい理想の女。そんな女を求めてくるくせに。恥ずかしげに顔をそむけて見せるあたしの顎を無理やりとって臭い唇が口付ける。
キスは嫌い。セックスは目を瞑ってたってできるけど、キスはセックスより蹂躙されている気がするから。ペニスより舌があたしを征服する。だから嫌い。
男の背に情熱的に腕を回して・・ぼんやりと天井を見上げる。ちらりと時計を見る。10分前。そろそろいいころあいかな・・。
ぁん・・ねぇ・・もう・・だめ・・だめなの・・・
切羽詰った声をあげると動きが激しくなる。激しい突き上げに、自慢の真珠がぐりぐりと壁をこする。痛いだけなのに。名前なんて覚えてない。この真珠をいつも見て思い出す。
亜里沙ちゃん・・いく・・いくよ・・・
ぁん・・きて・・・・あたしも・・・
大げさな悲鳴に合わせて締め付けるとあっという間に果てた。汗だくで満足そうな顔。いかにもいきましたって顔をしてるあたしの胸に口付けて
今日もよかったよ・・・
営業用の笑顔を貼り付けて、こうなったら早く片付けるしか考えない頭を無理やり押さえつけてシャワーに誘う。
また来てね
だってそれがお金になるんだもの。好きじゃない男に抱かれても、お金が入ると思えば多少の無茶はきける。といっても場末のソープじゃ中出しとかが限度。もっとも・・あたしはそんな命知らずな真似はできないけど。
男に服を着せてお見送り。
ありがとうございましたー。またねー。
甘ったるい声で今日も背中を見送る。何人見送ったんだろう。もう、忘れた。部屋への階段を上りながら、充実感よりため息が湧き上がるのはなぜだろう・・・。疑問に答えが出る前に次の客を出迎える。
鬻ぐのは一時の幻。そんな、日に透ける羽根のような物を背負ってあたしはネオンの海に溶け込んでいる・・。