ご主人様と私
文:彩音
画:がそんみほ様
……鍵掛けて、一体どうするつもり……?
心なしかすごく楽しそうなんですけど……?
さらにその下の引出しを開ければ中には……。
「ううんむっ!?」
「あーうるさいうるさい」
ガチャリ。ガチャリ。
何てことだろう。
あたしの両手はそれぞれの肘掛に手錠で固定されてしまった。
「奴隷のしつけはまずその立場を思い知らせることから始めなきゃいけないからね」
奴隷!?
立場!?
あたし、ただのメイドなんですけどっ!?
パニックに陥って目を白黒させているあたしの猿轡が不意に外れた。
「ど、どういうことよっ! あたし奴隷なんかじゃないからっ。て言うかこれ、解いてっ!」
「やっぱり口の利き方がなってないなあ。減点その1」
さらりと言いながら貴斗がしゃがみこむと足に開放感が訪れた。どうやらこの感覚は靴を脱がされてしまったらしい。
いや、らしいじゃなくて。
「何するのよっ。ここ、西洋かぶれしてるんだから靴履かせてよっ」
「西洋かぶれとはなんだよ。『履かせて』じゃなくて『履かせてください』だろ? 減点その2」
って靴下脱がさないでよーっ。
「は、履かせてくださいっ。てか、脱がせてどうするのよっ」
「『どうするんですか』減点3。んー……ヘッドドレスはそのままのほうがいいな」
「エプロンもそのままがいいってばーっ」
器用にあたしを座らせたままエプロンを脱がせていく貴斗。でも、これ以上は簡単には脱げない。
ほんの少し安心したあたしの表情を見透かしたように貴斗はにやりと笑った。
あー、くそっ。
何でそんな顔に一瞬ドキッとするのよ、あたしっ。
「なかなか簡単には学ばないみたいだなあ。減点4」
「いやっ、それはやだっ」
貴斗の長い指があたしの襟元からリボンを外した。それだけでなんだかすごく心細くなってしまう。まだ洋服全部来てるのに、まるで裸にされたみたいに心もとない気持ち。
「『それは』? じゃあ、他はいいんだな」
そのにやけた顔が近づいて、あたしの脇の下から貴斗の手が通された。
まさか、ファスナー外す気?
精一杯椅子の背に背中を押し付けて抵抗してみる。脱がされちゃたまんないもの。
「よくないっ」
「やっぱり口の利き方がなってない。減点5」
「きゃあっ!」
こしょっと脇が擽られた瞬間。
思わず浮いたあたしの背中にするりと貴斗の手がもぐりこんでしまった。
やばい。本当に脱がされちゃう。
「やだっ。こんなのやだっ」
「君に拒む権利なんてない。これは躾だからね」
しゃっと硬い音がして背中が妙に涼しくなる。背中のファスナーが外されてしまったのだ。